学ぶべき手法

少し前に、國學院大學の友人にお願いし、気になっていた研究論文を入手しました。本来であれば、自分自身で図書館などに行ってその論文のコピーをしてくることが研究に携わるものとしての常識なのですが、時間の都合と入手しづらいという理由でお願いしてしまいました(反省)。
その論文は、田中史生「7〜11世紀の奄美沖縄諸島と国際社会―交流が生み出す地域―」(関東学院大学経済学部総合学術論叢『自然・人間・社会』38、2005年)です。
内容については要旨がついています。以下の通り(55頁)。

本稿は、近年の考古学の成果を受け、奄美沖縄諸島のグスク時代以前の社会変容を文献史学の立場から捉え直したものである。分析の結果、奄美沖縄諸島は、7世紀の緊迫化した東アジア情勢の影響を直接受ける形で7世紀から史料に登場するようになったこと、以後の遠距離交易・交流とともに進行したらしい「南島」諸地域の階層化は、9世紀以後の列島を取り巻く国際交易の活況に刺激を受け、広域的な地域「統合」へ向かっていったことが想定された。こうした地域「統合」のプロセスは、地域差・時間差を超えて歴史のなかに広く認められるものである。その総合的な把握が今後の課題として残されている。
キーワード 奄美、沖縄、南島、掖玖、ヤコウガイ、カムィヤキ、貿易陶磁、国際交易

9世紀の大宰府を中心とした日本列島を取り巻く国際交易の活況と奄美沖縄諸島の交流史の連動は、「唐物」を研究する私としても非常に興味深い指摘です。まさに、「ネットワーク」の分析方法を示した論考と評価できます。先日公表した『歴史評論』でもあげるべき論文だったと思います(間に合いませんでした)。10世紀以降の東アジア海域(特に東シナ海南シナ海)や東南アジア海域をめぐる歴史的展開との関係が気になるところです。琉球王国の歴史および前史を糸口として、検討していく必要がありそうです。
実は、以上のことに関連して一つ考えているテーマがあったりします。考古学の成果を活かすことは苦手なので、他の路線で…ここ10年以内にはやりたいと思います(笑)。