自分の専門に関わる論文を読む

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今日は少し専門的な話題です。
日本古代史の研究論文、河内春人氏の「石山寺遺教経奥書をめぐって」(『続日本紀研究』363、2006年8月)を読む。石山寺一切経中の一巻である遺教経の奥書に書かれている記述をめぐって、新解釈を提示しております。
従来、奥書に書かれている人物、「朋古満」=大伴古麻呂、「羽右満」=羽栗吉麻呂という二者択一に、写本の字面を検証し、第三者として「羽古満」を提示しており、新たな議論を呼ぶこと間違いありません。「これまでの研究では他の史料にも表れる人名である大伴古麻呂・羽栗吉麻呂などに引き付けて考える傾向が強かった」(4〜5頁)という指摘は、論理学的にも肯定できるものです。
検討の中で、大伴古麻呂説は完全に否定した上で、「おわりに」では「現時点では羽栗吉麻呂がもっとも蓋然性が高い」(12頁)とし、「羽古満」=羽栗吉麻呂の場合の憶測を提示してます。この部分が必要であったかは、いささか疑問でもあり、先の指摘とも少し矛盾するような印象を受けました。
たまにはこういう感想を書いてみるのも悪くないですね。ご本人には、「物足りない」と言われそうですが…(笑)。
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