「にんぷろ」ワークショップに駆けつける

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先日紹介した「にんぷろ」のワークショップ「徹底討論『シリーズ港町の世界史』をめぐって―東アジア海域史研究の未来―」が22日(土)・23日(日)で九州大学で行われるということで、ここ数日のハードスケジュールを考えず2日目からの参加を予定通り決行しました。
朝4:30過ぎに起き、羽田空港へ向かい、7:15発福岡行きの飛行機に乗り込みました。九州はここ数日大雨で本当に行けるか心配でしたが、無事に福岡空港に到着し、地下鉄に乗り「箱崎九大前」で降りました。地下鉄に乗っている間、「九州大学の校内はどうなっているのか?まったくわからないけど、行けばわかるだろう」なんて思っていましたが、行ってみると1人だったらまったくわからない場所に会場となる文学部の会議室がありました。こういう時、運だけはいい私は、偶然、東大の榎本渉さんに地下鉄の駅で会えたおかげで、無事に会場へ行くことができました。
会場へ到着すると、すでに報告は始まっていましたが、まだ1本目の途中だったので、だいたいの内容は把握することができました。以下、23日(日)のプログラムを掲げます。

9:30〜10:30 モデル報告1
安達裕之氏(東京大学大学院総合文化研究科)
「中国の船、日本の船」
八木光氏(東海大学海洋学部)
「進貢船の船型的特長とその性能について」
10:40〜11:50 モデル報告2
藤田明良氏(天理大学国際文化学部)
「海域交流の広域性と地域性―海の信仰を手がかりに」
13:30〜14:30 モデル報告3
渡辺美季氏(東京大学東洋文化研究所
「海域史研究とは何か?―近世東アジアの漂流・漂着問題から考える」
14:40〜16:50 討論「東アジア海域史研究のこれから」
(司会…岡元司氏・羽田正氏)

モデル報告1は、「造船班」(「にんぷろ」はいろいろな班があって訳がわかりません…)の方々による船の構造や性能についての報告でした。普段、聞くことがない理系の報告で(「〜ノット」とか出てきました)、新鮮というよりは基礎知識が無さ過ぎて難しいのと、感覚的な発言が多かったので、正直いろいろな意味で「?」でした。
モデル報告2の藤田報告は、最近、藤田さんが精力的に進めている(東)アジアにおける媽祖信仰の研究についてでした。この信仰の広がりや類似の伝承を掘り出し、検証していくことによって、海域交流の広域性(海域と海域とのつながり・ジャンク船ネットワーク)と地域性(ジャンク船ネットワークよりも基層の交流?)が見えてくるのでは?という提言でした。さすがです。
モデル報告3の渡辺報告は、「鎖国」「海禁」政策が展開する16世紀を、海の「開放性」から「閉鎖性」へと変化する史的変遷期としてとらえ、その中での漂流・漂着の研究をどのように進めていけばいいのかを熱く報告しておりました。特に、海域と陸域との違いと双方向的に「異」と見たときの視点をどのように考えればいいのか?(海域と陸域の「境界」をどのように考えるのか?)という通時代的に課題となることを提供してくれました。
最後の討論では、「にんぷろ」をこれからどのようにしていけばいいのか?という議論がメインで、「東アジア海域史研究のこれから」というテーマが少し陰に隠れておりました。しかし、討論を始める前に配られた岡さんによる、この2日間の報告に即した意見・討論のまとめと課題は、まさに「東アジア海域史研究のこれから」を考える上で重要な視点・題材をコンパクトにまとめてあり、非常に有益でした。討論を聞いていて私は、「とんでもない分野を研究してしまっている」と痛感しまくりでした(焦)。
ワークショップ終了後は、参加していた山内晋次さんのお誘いもあり、普段出くわさない方々と飲みに行くことができました。比較的若手の方々と博多天神で飲みましたが、この分野ではかなり著名な方々が、時代や地域を越えて多く集まっておりました。山内晋次さん、米谷均さん、伊藤幸司さん、中島楽章さん、荒木和憲さん、榎本渉さん、山崎岳さん、四日市康博さんと、東西の蒼々たる気鋭の研究者ばかりで、私はただただ、興味深い話や議論に耳を傾けるだけでした。この場で、荒木さんに「ブログ見てますよ〜」と言われました。九州大学の人が見ているとは?!インターネットとは恐ろしいものだと思う今日この頃です。
飲み会が終了し、地下鉄で博多駅前のホテルへ向かおうとすると、山内さんが「歩いて「唐房」があった地域を通りながら帰りましょう」という願ってもないお誘いがあり、私は山内さんと二人で、天神から博多駅まで雨が降る中、歩きました。中洲・櫛田神社あたりの、平安中期以降、中国系商人が滞在した施設である「唐房」があった地域を説明を聞きながら歩くという貴重な体験をさせて頂きました。さらに、博多駅を着いて、少し早い時間であったこともあり、山内さんと少し飲みに行くことになりました。山内さん、ありがとうございます。
今日は、非常に有意義な1日となりました。運もここまで良いと恐ろしいですね(笑)。
最後に、今日、四日市康博さんと荒木和憲さんから論文の抜き刷りを頂きました。ありがとうございます。
四日市康博「元朝斡脱政策にみる交易活動と宗教活動の諸相―附『元典章』斡脱関連条文訳注―」(九州大学二十一世紀COEプログラム(人文科学)『東アジアと日本―交流と変容』3、2006年)
四日市康博「元朝南海交易経営考―文書行政と銭貨の流れから―」(『九州大学東洋史論集』34、2006年)
四日市康博「元朝とイル=ハン朝の外交・通商関係における国際貿易商人」(森川哲雄・佐伯弘次編『内陸圏・海域圏交流ネットワークとイスラム櫂歌書房、2006年)
○荒木和憲「中世対馬の朝鮮貿易と領国経済」(『韓国研究センター年報』5、2005年)
○荒木和憲「十五・十六世紀の島津氏―琉球関係」(『九州史学』144、2006年)
佐伯弘次・松尾弘毅・荒木和憲「14〜16世紀の三島地域と朝鮮」」(森川哲雄・佐伯弘次編『内陸圏・海域圏交流ネットワークとイスラム櫂歌書房、2006年)
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