「硬質」と「日本」人

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角川春樹事務所発刊の『月刊ランティエ』2006年5月号を購入。表紙上には「日本が日本でなくなっていいのか!?―「天皇制クライシス!」という三島風の言葉。表紙は皇太子妃雅子さん。また、特集として「慶祝秋篠宮妃殿下ご懐妊」ということで「皇室と日本人―女性、女系、世襲万世一系…知らないではすまない!皇位継承論を論証する―」というテーマで、7人の方がコメントを寄せています。
まず、35頁の同特集の頭には、次のように書かれています。

“このまま行ったら「日本」はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする”三島由紀夫35年前のこの発言など、“抜け目のない、からっぽな”経済の国に住む我々はすっかり忘れてしまった。ただ、少し感じつつあった。このたび、おっちょこちょいな首相のおかげで、天皇、女系、世襲などを考えさせられることになったが、下手したら、「皇室の構造改革でしょ」で行っちゃっていたかもしれないのだ。が、ひとまずコウノトリに救われた。万世一系は日本人に貫く棒の如きものではないか。諸君、もうわからない、知らないではすまないのだ。

万世一系は日本人に貫く棒の如きものではないか」というフレーズを見ただけでこの特集のコンセプトが何となくわかりますが…ひとまずここは見なかったことにしておきましょう。
以下、7人の方のコメントの特徴的な部分を簡単にあげていきます。

1.櫻井よしこ有識者会議にかけていたものとは」
○『皇室典範』の「改悪」に反対。
○「国のかたち」を根本から変えてしまう権利は、小泉首相や『有識者会議』にあるはずもなく、今上天皇にすらない。
○神話時代以来、連綿と続いてきた「男系による万世一系」の皇統を守る方法を模索すべき。

2.堤堯「ご懐妊は天の啓示と受け取るべきだ」
三島由紀夫が堤氏に語ったらしい。「天皇は日本のジョーカー(=オールマイティー)なんだよ」と。
○神武以来、Y(男性遺伝子XYのY)が維持されて来たとするのはフィクションだ。天皇陵を発掘してDNAを調べるまでもなかろう。しかし、そのフィクションが内外ともに信じられ、世界で唯一、最古の家系と認識されていること自体が大事だ。
○フィクションが信じられない時代は野蛮の時代であると。なぜなら文化とはフィクションだからだ。
稚内から石垣島まで千三百キロ。細長い日本列島を束ねるには背骨が必要だ。「統合の象徴」の効用は依然として存在する。それも万世一系の縦軸Yを維持するがユエにである。Yなし天皇に意味があるのか。ジョーカーの役割を期待できるのか。あえて皇統からYを引き抜く所業は、背骨を抜くにひとしい。

3.呉智英天皇制の抱える「矛盾」がさらに顕在化してくる」
○(最近の天皇制についての議論に対し)根源的な議論にお目にかかったことがない。天皇制って一体何なのか、何のためにあるのか、という批判的・懐疑的議論である。
天皇制に限らず、もっと一般的に王たる者は、強いが故に王である。(中略)初代の王は“絶対的に強い”王である。だからこそ、民を征服し、君臨できたのだ。
○(明治・大正・昭和)三天皇が“非常に優れた”人物であることはまちがいないが、“絶対的に優れた”人物ではないだろう。第一、そんなことどうやって証明するのか。
○先人の「対策」①系統論→「きわめて危うい」:系統論は、実は科学に依拠しているが故に、より強い科学的根拠を提示されたら勝ちを譲らなければならないのだ。しかし、科学に負ける天皇制って何だろう。
○先人の「対策」②近代憲法皇室典範天皇の意義や地位などを規定→これも「きわめて危うい」:法律が天皇を作り、天皇を定めているのだとしたら、法律の方が上位だということになる(=「天皇機関説」)。
日本国憲法治下の現在の日本では、天皇憲法に規定された「象徴」という国家機関である。この機関は、象徴としての政治(国事行為)しかできない(憲法第四条、第七条)。後継ぎを誰にするのかさえ、皇室典範という法律に従わなければならず、天皇自らは決められていない。

4.竹田恒泰竹田宮恒徳王の孫)「旧皇族皇籍離脱皇室典範問題」
皇室典範の議論で、皇位の男系継承を保つために、旧皇族を活用する方法がいろいろと主張されているが、私がこれまで聞き及んだ方法の中で、一番違和感がないのは、宮家の当主の御希望があった場合に、皇室会議の議を経て旧皇族などから養子を取れるようにするといった方法である。また、この場合、旧皇族から皇室に入った者には皇位継承権を与えないこと、またその者が子供を儲けた場合は、皇位継承順位は旧皇室典範同様に実系によることが必要だと私は考える。
国民主権の世の中である。国民が十分に認識を深めた上で、国民の総意をもって皇室典範のあり方を決めればよいと思う。
○国民と国会議員が、「伝統に裏打ちされた文化」を尊重して、賢明な判断を下すことを希望する。

5.石堂淑朗「親方日の丸の意味を今一度考えよう」
国鉄全盛時代「親方日の丸」という言葉が大船に乗ってのうのうと楽に暮らすという悪しき意味のみで使われた。しかし、鉄道マンの、特に機関手の過酷な労働を熟知する私には「親方日の丸」という終身保障が彼らへの唯一の労働対価だったという考えを捨てきれないのである。国の名誉のために働くという気持ちだけが世界一時刻の正確な列車の運行を支えたのだ。
○世界中難民だらけだ。難民率とでも言うものがあるとすれば日本は最低の筈である。世界に冠たる日本!かかる国家の象徴である天皇陛下及び平価を支える皇室への敬意が活きていたのは理の当然であった。
○国旗「日の丸」は日本の象徴である。象徴は全てに超越した無限の存在である。天皇陛下は日本国家に無限責任を取ろうという存在なのだ。(中略)さればこそ皇位継承権とは一旦緩急の場合天皇に殉じてこの無限責任を全うする順位を言う。
○皇族は有識者会議などという愚者の寄せ集めの愚かな意見に左右されるごとき存在ではない。くたばれ有識者会議!

6.中島梓「我々は平安時代人である」
○名字なき日本の皇室において、その聖性を付与しているものは「名字がない」ということです。つまり「家ではない」ということである。(中略)だからこそ、「人間天皇」と云われつつも、本当は天皇陛下とは「次の天皇へと継承される純血」そのものなのである。その「純血の継承」以外には、日本の皇室の特異性を象徴するものはないのです。だからこそ、そこでは女はあくまでも「子を生む機械」「お腹様」でしかない。
○「日本が現代だなどいうのはまったくの嘘で、根源的には日本は平安時代と何ひとつ変わっておらんじゃないか」という感慨をあらたにするのですが、平安時代には藤原一族ほかがこぞって自分の娘を宮廷にあげ、中宮にし、更衣にし、女御にし、なんとかして「お腹様」にしようとした。
○21世紀に及んで、実際には、我々は、「平安時代から一切変化していない」国家であることを世界じゅうに証明し続けている。(中略)結局のところそれが永遠に人間のさがだ、ということなら、もう、あまりに小賢しい理屈をつけぬが宜しい。
○現代人ぶらずにお側女でもなんでもおいて、男児ご出生を期待すればいいのに、と私は思うのですが。

7.荒木敏夫「歴史は常に多様性をはらんでいた」
皇位継承が成文化されたのは明治二十二年の皇室典範制定によってであり、それ以前は不文の慣習であった事実。すなわち、皇位継承の伝統と一言で言うが、この不文の歴史をどうとらえるか、そこに含まれる歴史的事実をどう評価するかによって、「伝統」は別の解釈も可能になるのですから、男系継承が成文化されたのも近代以降であるという事実を忘れてはならないでしょう。
○(前近代の女帝がイレギュラーでないことを具体的事実に即して説明した上で)百二十五代に亘って男系の皇統が保たれてきたことは事実です。しかしこれは、「そうでなければならない」という考えのもとに守られてきた伝統とは言い切れません。天皇家=皇室の現在と未来、女帝や女系天皇の是非について議論する場合には、こうした歴史学上の研究成果も顧みる必要があります。
○歴史は常に多様性をはらんでいました。天皇の在り方も、様々な可能性・柔軟性を持っていたのです。女帝議論も、男系か女系かという議論も、その多様性を認めた上で、現代に相応しい判断をすべきでしょう。

さて、ここまで長文になってしまい、私の意見を述べる気力がありませんが、一言。
天皇制」とは何か?その背後にある「自分」の過去・現在・未来、「自分たち」「私たち」の過去・現在・未来を、一面的・一方的ではなく、多面的・多様に、そして双方向的に考えることが必要であり、自分1人で考えるべきことではないと思います。
天皇制」や「日本」に固執する前に、考えることがありますよね。