正倉院に収められた薬物
重見泰「正倉院薬物斤量考」(『古代文化』57-8、2005年)を読む。
八世紀後半〜九世紀における奈良東大寺の正倉院に収められている薬物の斤量変化(減るはずのものが増加している)の理由を考えるという論考です。その理由は、当該期の「対外関係」に求めるというものです。薬物のほとんどは「外来」品であり、そのもたらし手として、新羅や渤海の外交使節ではなく、九世紀初めに(弘仁年間頃から)それらの地域を拠点とする「商人」であることを指摘しています。
非常に興味深い指摘です。勉強になりました。日本王権側が、「外来」のものをより意識する契機として、正倉院薬物を材料に考えることもできそうです。西日本を中心とした地方での薬物利用の様相や貿易陶磁(瓷)器との比較が必要そうですね。
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